【ソフトウェアレビュー】[私見]動画ダウンロードソフトについて

アイキャッチ画像 ソフトウェアレビュー

先日、あるソフトウェアメーカーさんから、インターネット上の動画サービスが配信している動画をダウンロードするソフトウェアのレビューを書いてみないかとお話がありました。

しかし、レビューを書く上で確認しておかなければならないことを質問すると、連絡が途絶えてしまいました。

私としては下調べもしていましたし、注意点をよく知らないままこの手のソフトを使用している方が多いのではないかな?と思い、私見として、注意喚起も含めた記事にさせていただきたいと思います。

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依頼されたソフトウェアの概要

今回お話をいただいたのは、NetflixやAmazon Prime Video、Hulu、Disney+、U-NEXT、NHK+、ABEMA、楽天TV、YouTube、ニコニコ動画、Tiktokなど、世界1000以上の動画配信サイトから動画や音楽、生放送やライブ配信、TV番組やプレイリストを高品質でダウンロード、保存できるソフトウェアでした。

また、字幕や音声の言語を選択する機能や、動画に挿入される広告を削除する機能、DRMで保護された動画も録画可能という機能などが備わっています。

対応しているサイトすべてから動画をダウンロードできるAll in Oneパッケージで66,000円程度の製品です。

なお、同様のソフトウェアは数多く存在しているようで、そのすべてを調べきれないため、具体的な商品名等は記載しません。

懸念点

まずはじめに、私としては、このソフトウェアは1点を除き違法ではないと考えています。

しかし、使い方によっては種々の問題が発生しうると思っており、使用上の主な注意点を以下に記します。

著作権

これらのソフトウェアの概要を聞いて、勘の良い方ならまず思い浮かべるのが著作権上の懸念だと思います。

著作権とは、著作者がその著作物を排他的、独占的に利用できる権利で、知的財産権の1つです。
日本における著作権の保護期間は、著作者が実名で著作物を創作した場合、死後70年。変名や無名で創作した場合は公表後70年、団体名義で創作した場合は公表後70年となっています。

当然、YouTubeなどにアップロードされた動画も著作権の対象となるのですが、著作権の侵害とならないケースとして、フェアユースがあります。
フェアユースの代表例としては個人利用があり、著作権の保護対象であっても個人で使用する場合は問題ありません。
逆に、フェアユースにあたらない行為としては、動画であれば、たとえば店頭や老人会の集まりで放映したり、インターネット上の動画サイトにアップロードしたり、メディアに保存したものを配布したりする行為が挙げられます。

動画ダウンロードソフトのレビュー記事を見ていると、このフェアユースについて書かれていることは多いのですが、もう1つ注意が必要なことがあります。

それは、著作権侵害と知りながら、有償著作物をダウンロードした場合などです。この場合、私的利用であっても著作権の侵害となります。
たとえば、テレビで放送された番組が著作権者の許可なくアップロードされていたときに、その動画をダウンロードした場合などに適用されます。

利用規約

残念なことに、動画ダウンロードソフトのレビュー記事の多くで触れられていなかったのが、動画配信サイトの利用規約です。

YouTubeの場合

たとえば、YouTubeであれば、利用規約に

本サービスの利用には制限があり、以下の行為が禁止されています。

  1. 本サービスまたはコンテンツのいずれかの部分に対しても、アクセス、複製、ダウンロード、配信、送信、放送、展示、販売、ライセンス供与、改変、修正、またはその他の方法での使用を行うこと。ただし、(a)本サービスによって明示的に承認されている場合、または(b)YouTube および(適用される場合)各権利所持者が事前に書面で許可している場合を除きます。

などと記載されています。
つまり、YouTubeの動画をダウンロードする場合は、事前に書面による許可が必要です。

楽天TVの場合

次に、楽天TVの利用規約を見てみると

第12条(禁止事項)
利用者は本サービスの利用に当たり、以下の事項を行ってはなりません。
(1)コンテンツを複製すること。
(2)コンテンツの複製防止機能を解除すること。

などと記載されています。
ダウンロードした動画を保存する行為は、「複製」にあたると考えられます。
また、複製防止機能を解除するというのは、DRMでの保護を解除することなどを指しています。

Netflixの場合

また、Netflixの利用規約を見てみると

4.6. お客様は、適用法、規則および規制や、サービスもしくはそのコンテンツの使用に関するその他の制限の一切にしたがってNetflixサービス (関連する一切の機能を含みます) を利用することに同意します。当社に明示的に認められていない限り、お客様は以下のことを行わないことに同意します。

(i) Netflixサービスに含まれる、または同サービスから、もしくは同サービスを通じて取得されるコンテンツおよび情報について、アーカイブ、複製、頒布、改ざん、展示、上演、出版、使用許諾、二次的著作物の創出、販売申し出、または使用を行うこと。

(ii) Netflixサービスのコンテンツ保護やその他の要素 (グラフィカルユーザーインターフェース、広告または広告機能、著作権表示、商標など) を回避、除去、変更、無効化、デグレード、ブロック、非表示、妨害すること。

などと記載されています。
ダウンロードして保存する行為に加え、広告の除去も禁止することが明記されていますね。

なぜこのような利用規約が定められているのか?

動画配信サービス会社が、このような利用規約を定めているのは、ひとことで言えば自社の利益を守るためです。

たとえばYouTubeでは、動画を再生するときに流す広告から収入を得ています。
また、広告を入れて欲しくない人のために、「YouTube Premium」という有料サービスが用意されています。
それにも関わらず、お気に入りの動画を自分のパソコンに保存され、繰り返し見られてしまうと、動画再生回数が減り、広告収入が減少することになります。

また、楽天TVであれば、定額見放題プランや購入のほか、レンタルを行うことができます。
レンタル期間は基本30日に設定されているようですが、当然楽天TVとしては30日分のレンタル料しか徴収していません。
それにも関わらず、レンタル期間内にパソコンに動画をダウンロードし、レンタル期間を過ぎても恒久的に視聴できるようにすると、本来購入やサブスクで得られるはずだった収入との差異の分だけ、楽天TVに不利益が生じることになります。

まとめ(私見)

上に書いたように、私がパッと思いついただけでも、動画ダウンロードソフトを使用するにあたって、大きく2つの注意点(著作権、利用規約)があります。
特に2つめの利用規約については、同様のソフトのレビュー記事を見ていても、ほとんど触れられていません。

今回私がソフトウェア会社に質問をしたっきり、連絡が途絶えてしまったのも、この利用規約についての質問でした。
動画配信サービス会社が定めている規約に対して、販売側で各社と話をつけているのか、それともユーザがケアしなければならないのか?という質問です。
おそらく後者だとは思ったのですが、それならそれでレビューの書き方がありますし、注意喚起をするのはレビューアの義務だと思ったからです。

それで音信不通となってしまうのは、後ろめたい気持ちがあったのでしょうか?
「弊社が自信を持って開発した商品」とか、「紹介する価値があると存じますので、勝手に自薦させていただきます」といった言葉を並べていたのですから、正々堂々とアピールすれば良いのにと思ってしまいます。

また、「ご返信頂きますと幸いです」と書かれていたので返信したのに、向こうから一方的に連絡を絶つとは…
こちらとしても、著作権法を確認し直したり、各社の利用規約を調べたりと、それなりの工数がかかっているので、ふざけんな!って感じなんですけどね。
まぁ、転んでもただでは起きない人間なので、こうやって記事にさせてもらっていますが。

さて、数多く出回っている動画ダウンロードソフトですが、使用する上で注意すべき点は理解いただけたかと思います。
それをふまえた上で、このようなソフトをどう使うかは、大人のすることなので(未成年は保護者の管理の下使用しているという前提で)、特に口出しをするつもりはありません。

ただ、こういった決まりがあるんだってことをしていて欲しいなと。
そして、これまで誤った使い方をしていた方が、1人でも正しい使い方に改めて下さったら良いなって思っています。

今のところ、こういったソフトを使って、著作権侵害で訴えられたり、損害賠償請求を起こされたりという話は、私の耳には入ってきていません。
しかし、YouTubeでは、広告を表示しないようにするツール、いわゆる「広告ブロッカー」を使用しているユーザに対して、広告が入らなくなる有料サービス「YouTube Premium」への加入を促すメッセージを送っているという話を聞きます。
つまり、ユーザがどのようなソフトを使って動画を視聴しているかをある程度把握しているようです。

よっぽどのことがない限りあり得ないとは思いますが、仮に訴えを起こされた場合、「自分より派手にやっているあの人が訴えられていないのはおかしい」といった苦しい言い訳に終始せざるを得ないと思います。
また、社会的制裁も受け、業種によっては…ということも十分考えられます。
まぁ、個人のレベルでそんなことになることはまずないと思いますが、訴えられなければ良いと思うかどうかは、皆様の正義感に任せます。

最後になりますが、懸念点の頭で私は「1点を除き違法ではない」と書きましたが、その1点とはDRMの解除機能です。
「コピーワンス」や「ダビング10」と言えばわかるでしょうか。
アナログのビデオテープの時代は、ダビングを繰り返すと画質が劣化していきましたが、ディジタルデータではコピーを繰り返してもデータは劣化しません。
そのため、テレビ番組やDVDなどには、ディジタルコンテンツの著作権を保護するためにDRMという仕組みが用いられています。

このDRMですが、日本では2012年に著作権法が改正され、DRMを解除すること、DRMを解除した著作物を配布、販売すること、そして、DRM解除ツールを配布することが禁じられました。
今回私のところにレビューの依頼があったソフトウェアは、このDRM解除機能を搭載していますので、日本では”違法ソフト”となります。

なお、DRM解除機能を持たないソフトであれば、適法であるかと思いますが、ほかに違法な機能が搭載されている可能性がないとは言えません。

長々と書いてきましたが、要は、動画ダウンロードソフトなどを使用する場合は、著作権法や各社の利用規約等を確認した上で使ってねってことです。
それ以上は大人のやることなので何も言いません。
ただ、知らずに使っているという人を1人でも減らしたいと思い、この記事を書かせていただきました。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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